ぎふベジ


ブロッコリー農家島塚 美香さんのお話(2026年2月取材)

12~6月にかけてブロッコリーの収穫期を迎える、岐阜市西郷地区。1月下旬に訪れたハウスでは、ズラリと並ぶトレイの一面を青々と若葉が芽吹いていました。生命力たっぷりに葉を広げるのは、ポット育ちのブロッコリーの苗。ハウスでの安定した温度管理のもと、2月の定植に向けてコンディションを整えています。島塚美香さんは、ご主人と営むファームでブロッコリーの苗づくりから栽培、収穫までを一貫して担っています。

「嫁ぎ先が花農家だったんです。私は生まれは鹿児島で、子どもの頃に岐阜へ越してきたので岐阜弁です(笑)。高校を卒業後、地元の一般企業に就職して、20代は化粧品販売員も経験しました。夫は農家の3代目で、出会った当初は個人事業主として花農家を立ち上げたところで。夫から『手伝ってくれないか』と言われて、この道に入ったのが2000年の頃でしたね。」

手塩にかけて育てた花々を出荷まで見届けるのは、やりがいのある仕事です。島塚さんは初めての農業に一所懸命に取り組みながら、女性ならではの葛藤もいろいろ経験したと言います。

「農作業は性(しょう)に合っていたと思います。気がついたときには、手が日焼けで真っ黒(笑)。おまけに花のアクが指先に染み付くと、洗ってもなかなか落ちなくて。水やりや葉の間引き作業はグローブなしの方がやりやすいんですが、化粧品販売で肌を労わりましょうと伝えてきただけに、人前で手を見せることが恥ずかしかったですね。」

当時を振り返りながら、島塚さんは手の甲をじっと眺めて「あはは」と朗らかに笑います。ご主人と力を合わせ、2006年から花の苗づくりのノウハウを活かしてブロッコリーの苗づくりと栽培を開始。現在は25haもの広い圃場で、花とブロッコリーだけでなくキャベツなどの野菜と米を生産し、複合経営を発展させ続けています。
「子どもたちが小さかった頃は、時間的にも心にも余裕がなかったですね。土日でも出荷があれば、子どもたちを遊びに連れていきたくても遊園地さえも連れていけなかった。子どもの成長はあっという間です。一緒に過ごせる時間が限られているのに、農作業も手を抜くわけにはいきませんから。そのジレンマがもどかしくて、こっそり泣くこともありました。」

すでに長男と長女は成人して独立し、岐阜農林高校で学んだ次男は酪農系の大学に進み、兄に続けと次女もまた同じ高校へ。学校が休みのときは収穫や袋詰めを手伝ってくれることもあると話す、島塚さんの表情はとても柔らかです。10年前から、岐阜県女性農業経営アドバイザーとして地域の農業発展にも貢献しています。
「今、岐阜県下に80名ほどの女性農業経営アドバイザーがいます。いろんなところに農業研修へ出かけたり、担い手の育成について話し合ったり、互いに相談しあったり。それぞれ作物は違っても、家族経営を支える環境は同じ。定期的な集まりが良い息抜きになっています(笑)。」

島塚さんのファームでは、春ブロッコリーの出荷が5月まで続きます。
「ちょっとでも傷んでいると出荷できないので、部分的な傷みはポチッと弾いたり、房をカットして袋入りにして直売所で販売します。作業は深夜までかかってしまうけど、新鮮なうちに出したいですから。廃棄するなんてもったいない、捨てられないですよ。」
主婦の視点で明るく話しながら、「小麦粉やマヨネーズの値上げは受け入れられるのに、野菜の値上がりは叩かれてしまうんですよね」と、世論に一石を投じる島塚さん。収穫する人の手、ラップする人の手、配送する人の手。どんな野菜もたくさんの人の手を経て食卓に上がることを、島塚さんの日焼けした手があらためて教えてくれました。

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