ぎふベジ


岐阜市園芸振興会 だいこん部会髙橋 正男 会長のお話(2018年6月取材)

長良川流域のきめ細かな砂壌土が育む、春だいこん。白く美しい容姿と甘みを含んだみずみずしい味わいから、市場でも高く評価されています。

「僕が住んでいる則武や、鷺山、島の周辺地区は、350年も前からだいこんを生産しており、“岐阜だいこん発祥の地”と言われております。漬物で有名な長細い『守口だいこん』もこの辺りが産地でした。」
そう語るのは、だいこんを作り続けてもうすぐ40年になる髙橋正男さん。地元の小、中学校での郷土学習にもたびたび招聘される、だいこん作りの名手です。
「春だいこんの収穫は、毎年2月末から始まり5月末まで続きます。収穫時期は女房と二人して朝3時には畑に出て、2〜3時間かけてだいこんを引きます。二人で大体日に1300〜1400本くらい。それを夫婦それぞれの軽トラックに積み込んで作業場に運んで。機械で洗浄した後、1本ずつ手作業でサイズごとに仕分けして箱詰めしております。朝早く引いた方が、洗い上がりが水分を含んできれいなんです。」
長年、だいこん作りと真摯に向き合ってきた髙橋さん。しかし、若い頃は両親の営む農業を継ぐ気はなかったと言います。

「31、32歳の頃、学校卒業後から勤めていた自動車修理会社が倒産してしまって。二人目の子どもが生まれたばかりで路頭に迷うわけにもいかず、家業に入りました。
その頃、岐阜だいこんが関西の市場で人気が出て作れば作るほど売れたものだから、親父の持っていた30aの畑だけでは面積が足らなくなって。それで稲作用の田んぼを借りて、春だいこんは田植え前まで、秋だいこんは田植え後に、同世代の継承者15〜16人で競うように作りました。」
髙橋さんら若手が一丸となって生産に尽力し、出荷量が伸びた岐阜だいこんはブランド化に成功。昭和62年には岐阜のだいこん部会が中日農業賞(農林水産大臣賞)を受賞するまでに発展しました。
「だいこんの生産には障害がつきものです。秋の長雨で軟腐病にかかって根が腐ったり、春は気温の上昇でだいこんの途中がゲンコツみたいに膨らむコブ症になったり。

それでも品質にこだわりたくて、部会の資材委員になって種の試験に取り組んできました。新しい品種が出れば基本品種と比較調査して、良ければ生産を切り替えて。そうしてたどり着いたのが『トップランナー』です。従来はハウス栽培していましたが、これは不織布をべたがけするマルチ栽培。雨も通しますから灌水の手間がかからず、省力化に繋がっています。」
長くてボリュームのある『トップランナー』は、市場でも好評価。
「それでも完璧に満足のいったことはなかなかなくてね。ここがこう良ければとか、次はこの点に気をつけてもっと良いものを作ろうとか、そんなことばっかり言っているので女房も笑っています。体力の衰えは年とともに感じているけれど、良いものを作りたい欲は衰えませんね。」
そう言って朗らかに笑う髙橋さん。飽くなき探究心と「良いだいこんを作りたい」という情熱が、岐阜だいこんの未来を支えます。

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