ぎふベジ


長良果樹振興会ぶどう部会(岐阜市園芸振興会果樹部会)坂井 忠雄 会長のお話(2017年9月取材)

長良川右岸の堤防沿いに立ち並ぶ、ぶどうの直売所。岐阜市の夏の風物詩ともいうべきこの景色は、1970年代頃から始まったと言われています。

「この辺りは、かつて養蚕が盛んだったと聞いております。一面の桑畑だったのが開墾されてイチゴ畑、松の苗木畑と変わっていき、それからJAの指導のもと、長良川河畔にぶどう栽培が定着しました。」
ひと言一言を噛みしめるように話す坂井忠雄さん。その姿には、実直な人柄がにじみ出ています。奥様のふさこさんと二人で、30年ほど前にぶどう農園を始めました。
「以前は大手自動車メーカーでサービスマンをしておりまして、定年を迎える少し前からぶどう作りを始めました。ぶどうは苗木がしっかりと根づいて枝葉が伸び、収穫に漕ぎ着けるまでに5年かかると言われます。当時、会社員だった私は出勤前と後、まだ幹の若いぶどうの世話をして。休みの日も畑にかかりっきりでした。ようやく房がつきはじめても、これが不格好で(笑)。最初の1〜2年は売り物にはなりませんでした。」

ぶどう栽培はすべて手作業。坂井さんは夫婦二人三脚で自然と対峙し、栽培経験を積んだ今も、ぶどう作りが簡単ではないことを日々実感しています。
「冬の寒い時期に、幹や枝の古い皮をむいて翌年に備える。春には枝の伸び方を想像しながら枝切りや剪定をして、芽吹いてきたら摘粒(てきりゅう)作業。1割、2割の良い芽を見極めて傷をつけないように残りの芽をカットする、いわゆる間引きを行うわけです。そして、6月頃に袋掛け作業。この畑は7aの広さがあり、4本の樹に3000房の巨峰が実るんですが、すべてに袋掛けをするには夫婦二人で10日ほどかかります。どの作業も根気と体力の要る作業です。」
毎朝6時にラジオ体操をして畑に向かう坂井さん。「健康のために」と始めた趣味のウォーキングで、京都・三条大橋から東京・日本橋までの東海道五十三次を3年かけて踏破しました。
「ゴールしたときも感動しますが、無事収穫の日を迎えられた喜びは、また別格です。買いに来られたお客さんから、直接『美味しい』と言っていただけたり、贈答でもらった方が『また食べたくて』と、このぶどう園まで足を運んでくださる。そうした言葉を聞くたび、本当にうれしく思います。
美味しいぶどうを作るためには、やはり平素から体力は鍛えておかないと。じゃないと立ちっぱなしで3000の房に袋掛けはできません。」

お客様と直にふれ合えることが、直売ならではの醍醐味であり、ご夫婦にとっては美味しいぶどう作りの源に。これからも自然と上手く付き合いながら、「完璧に粒が揃って味も良く、バランスの取れた巨峰作り」に夫唱婦随で邁進します。

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