ぎふベジ


岐阜市園芸振興会 だいこん部会髙橋 秀雄 会長のお話(2023年2月取材)

青々と葉を茂らせ、「早く引いて」と言わんばかりに土の中からすっくと伸びる春だいこん。岐阜市則武地区では毎年2月20日頃から春だいこんの出荷が始まり、3月、髙橋秀雄さんのハウスも収穫の最盛期を迎えています。栽培品種は「優等生」。色白で美しい容姿に加えて甘さがあり、みずみずしい食べごたえが特徴です。

「11月の上旬に播種(はしゅ)をしています。それから3カ月かけてハウスの中でじっくり、じっくり育つんです。寒い冬を乗り越えてきているでしょう。ということは、寒さから身を守るためにでんぷん質を糖分に変えて、凍らないようにしておるわけね。だからね、春一番のだいこんは本当に甘いんです。

そもそも、だいこんの特性が則武の地域と良く合っていると思います。この辺りは泥の中に砂も混ざった砂質土壌で、非常に水はけがいいんです。だから根張りも良く、それだけ養分をしっかり吸収できるから、丈夫で美味しい野菜が育つということです。」

そう話しながら、だいこん畑を慈しむような眼差しで眺める髙橋さん。代々農家を営む本家の4代目として生まれましたが、高校卒業後は食品関連企業に就職。40歳で退職するまで出向先の百貨店で接客を担い、農業とは無縁だったそう。

「継ぐつもりはなかったんですが、親父が脳梗塞で倒れましてね。女房が私に『お父さんやろうよ』と言ってくれましたので、腹が決まりました。就農して35年になりますが、ずっと女房と母と3人でやってきました。農業は一人ではできませんから、本当に助かります。」
家族の支えを力に、サラリーマンから農業へ転向した髙橋さん。その頃、髙橋さんのように会社を辞めて就農した4〜5人と切磋琢磨しながら、夏はえだまめ、ほうれんそう、秋から春にかけてだいこんの栽培に尽力してきました。

「やってみると仲間がたくさんおりました。若い頃はそうした仲間と酒を酌み交わしながら、いろいろ農業談義をしたものです。肥料をはじめ技術的なヒントを得たり、良い刺激をもらっていましたね。」
岐阜市のだいこん生産量は全国で17位ほどですが、その品質は県内外から高い評価を受けています。

「出荷規格が非常に厳しいですからね。それをクリアしているだいこんです。ですが、生産者の高齢化が進んで作付面積が減り、生産量はどんどん下がっています。だいこん部会では、数はできなくても良いものを出そうと、県の普及指導員にもご指導いただきながら努力しています。」

品質を追求する髙橋さんのだいこんは、葉先まで元気がみなぎっているようです。

「生き物ですからね、一所懸命に愛情をかけてやると本当に良いものが採れるんです。それには念入りな準備も欠かせないということです。逆に手間をかけないでいると、草ボーボーになってまって良質なものは採れません。それは間違いない。汗水流した分だけ応えてくれるから、作りがいが非常にあるんです。」
おだやかな口調ながら、言葉の端々から農業に懸ける熱い思いがあふれます。そんな髙橋さんにとっても後継者不足は身近な問題で、時代の流れも鑑みながら今、対策を講じているところです。

「この辺りも宅地が増えて10年前とは様変わりし、なかなか農業を継続することが難しい環境になってきています。それでも先祖から代々預かってきた土地で農業をやらしてもらって生活してきました。古い考え方かもしれませんが、やはり守っていきたい思いもある。だから今考えているのは、ここを貸し農園にできたらと思っているんです。」

そう言ってニカッと微笑む髙橋さん。岐阜だいこんのさらなる品質向上をめざしながら、これからの農業の在り方も模索し続けます。

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