ぎふベジ


JAぎふ大根部会 守口大根生産組合山田 智明 委員長のお話(2021年12月取材)

箱の中でぐるぐると巻かれ、べっ甲色に輝く『守口漬』。長さ1m以上にもおよぶ細長い守口だいこんを2〜3年かけて酒かすに漬け込んだ漬物で、古くからお歳暮やお中元などの贈答品として親しまれています。守口だいこんは、岐阜と愛知の一部が主な産地。だいこんの中でも長さが際立った品種で、飛騨美濃伝統野菜に指定されています。山田智明さんは30年来、この守口だいこんの生産に勤しんでいます。

「祖父の代から長良川の近くで守口だいこんを作ってきました。昔は今みたいに専用の機械がなかったから、腰の深さまで畑を掘って種を蒔いて、収穫するのも手引きでね。大変やったと思います。私は高校を卒業してから自動車製造業の会社でサラリーマンをしておったんですけど、親父が体調を崩したのを機に、会社を辞めて家業を継ぎました。32、33歳頃だったね。」

山田さんが農業の道に入った30年ほど前は60〜70人の生産者がいたと言いますが、現在、JAぎふ大根部会 守口大根生産組合に所属する農家は山田さんを含めてわずか4戸。各務原市(旧川島町)や笠松町で、稀少なだいこんの生産を守っています。

「守口だいこんは種から自分のところで作ります。前の年に収穫した中から、長さ、太さとも規格に合ったベストなものを選別して植え直すんです。5月頃に花が咲いたら、株ごと切って軒に吊るして。8月になったら、乾燥させただいこんを木の棒で叩いて種を取り出すわけです。

8月中は9月の種まきに備えて畑づくりもやらないかん。畝を見ると、ぽこっと三角みたいな山になっとるでしょう。あれはまず平地に1mほど機械で穴を掘っていくんやけど、一つの畝で40分くらいかかる。真夏の暑い日の作業になるもんやから、まぁ大変と言えば大変やわね。」

そう話しながらも、終始にこやかな山田さん。笠松町で守口だいこんを育てる傍ら、岐阜市内と各務原市(旧川島町)の畑で冬はだいこん、春から秋にかけてえだまめも栽培する、まさに『ぎふベジ』のエキスパート。土や天候との向き合い方も心得たものです。
「守口だいこんがまっすぐ伸びるには、空気を含んだフワッと柔らかい土が適しとるんですが、笠松町のこの畑は木曽川河川敷に近いこともあって、水はけが良く土壌が良いんです。以前、作っておった長良川辺りも良い土やったけど、宅地造成が進んだもんだから、数年前からここでやるようになりました。」

種づくりから行うことで年々品質は右肩上がりですが、山田さんはそんな現状に満足することなく、さらなる向上を目指します。
「毎年、同じもんはできませんからね。今年は雨が少なかったから、中に空洞ができてしまったり、逆に芯があるものもありました。かといって、雨が降り過ぎると盛り上げた土が凹んでしまって、その土の重みで根がまっすぐ伸びなくなる。だからこそ、規格外が少しでも出ないようにやっとるけどね。」

山田さんの地道な努力も手伝って、岐阜で栽培されている守口だいこんは契約している漬物製造業者からも高評価を得ているそう。

「岐阜の守口だいこんはみんなAクラス。業者さんの看板になる食材を作っとるのは、誇りでもあり、責任も感じるところやわね。体力が続くうちは、がんばって作りたいと思っています。」

趣味のゴルフは80台で18ホールを回るという山田さん。「たくさん働いたら翌日は早上がりしてゴルフ練習に行く。そんな風に働けるのが農家の魅力やね」と、日に焼けた顔をほころばせます。山田さんはオンとオフを上手に切り替え、これからも伝統野菜を守り続けます。

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