ぎふベジ


岐阜市園芸振興会 いちご部会江崎 和浩 副会長のお話(2019年2月取材)

12月〜3月にかけて最盛期を迎える「岐阜いちご」。岐阜市日置江地区で22年来、いちごづくりを行っている江崎和浩さんも、冬は収穫で大忙しです。いちごの新規就農者が増えていますが、江崎さんも異業種からこの道に入った一人です。

「高校卒業後、大手自動車ディーラーの整備工場に就職し、メカニックと販売を担当していました。もともとバイクや自動車が好きやったので、機械イジリが楽しくてね。ところが平成8年(1996年)に、米農家を営んでいた親父が急逝してしまって。それまでも田植えや収穫は手伝っていたんで、サラリーマンをやりながら跡を継ごうかと思ったんやけど、2町歩(約2ha)も水耕田があり片手間にできるものでもありませんでした。それで36歳の時、農業に入りました。」

そして米づくりの閑散期にもできることはないかと、始めたのがいちご栽培でした。
「親父もやっていなかったので、いちごはゼロからのスタート。ちょうど『岐阜県方式』のいちご栽培が普及センターで開発されたばかりで、最初は練習を兼ねて土耕(※1)を一年やってみて、2年目から高設ベンチ岐阜県方式(※2)をやりました。いちご部会にも仲間入りして基本を教えていただきながら、試行錯誤しながら取り組んできました。」
(※1)土耕:地面の土を畝立てし、苗を植えて栽培する方法
(※2)高設ベンチ岐阜県方式:地面から1メートル程度の高さの台に苗を設置し、養液を使用して栽培する方法  
いちご栽培は繊細な作業です。ハウスの温度管理はもちろん、親苗を育成して定植させるなど、収穫時期以外にもやることがいっぱいあります。
「苗が株から枯れてしまう炭疽病(たんそびょう)や、葉に白い模様が出るうどんこ病にかかったり、害虫が出たり。手応えがつかめるまで10年はかかりました。5月に田植えの準備の傍らで親苗を育て始め、ランナーが伸びて子苗に育っていく様子を見ながら10日に一度は消毒作業。8月の終わり頃から定植しますが、ビニールハウスの中が暑くてね。早朝や夕方に行いますが、12000株を一株ずつ手で植えていく作業はこたえます。それでも花が咲いて実をつけ始めると、ホッとするしやっぱりうれしいね。」
目尻にシワを寄せ、穏やかにそう語る江崎さん。サポートする奥様も「私はパッケージ詰めしているときが一番楽しい」と、にっこり。
「ランニングコストもですが、施設維持費が結構かかるんです。ハウスのビニールは5〜6年に一度、張り替えが必要で。去年、親苗のハウスが台風で破れましたが、自然災害ばっかりは仕方ないからね。」
今シーズンは受粉のための蜂が全滅する被害もあったといいますが、ご夫婦が醸し出す泰然自若とした雰囲気は、この道22年の揺るぎないキャリアの証です。

「農家になったとき、いちごはお金になるから毎年5月には海外旅行に行けるって言われたの。初期投資した施設費の返済が終わってからようやく、新婚旅行以来の海外へ行けました(笑)」と、奥様。
「ここ5〜6年で、やっとそんな余裕ができました。ハウス栽培とはいえ、いちごも天候が第一。12月の出荷ピークに合わせて定植時期をずらしたからといって思い通りにいかなかったりする。コントロールできないところが、農業の面白いところです」と、江崎さん。
いちごづくりのベテランは、2019年の春から岐阜県オリジナル品種の「美濃娘」の栽培に新たに挑みます。

おいしい
岐阜の野菜たち

旬の暦