ぎふベジ


岐阜市かき共販振興会内藤 信義 会長のお話(2017年11月取材)

昨年、2個32万4000円もの高値で取引された「天下富舞(てんかふぶ)」。岐阜県が開発したこの高級柿の栽培に、今年度から取り組んでいるのが内藤信義さんです。

「以前は大手工務店に勤めておりまして、43歳のときに父が亡くなりこの道に入りました。父の代までは稲作を主にやっておりましたが、僕がやることになって水田から柿畑に転作しました。なんでって、柿の単価が良かったですし、資本がかからなかったからね(笑)。
とはいえ、最初は作り方も何もわっからへん。岐阜市農協技術主幹の松永先生に教えてもらいながら、本を買ってきて独学で勉強して。前は工事関係の仕事をしとったもんで、自分でショベルカーを動かして畑づくりをして、2反*から始めた柿畑を徐々に8反までに増やしていきました。」
人懐っこい笑顔で朗らかに語る内藤さん。分け隔てない人柄ながら、柿栽培歴30余年を誇る、岐阜県きっての柿づくり第一人者です。

柿が根づくまでは早くて6年。その間、内藤さんは稲作等で生計を立て、刀根柿など3品種の柿栽培に取り組みました。
「刀根柿は種無しで味が良くてね。ところが、経費がかかるわりに利益が出ない。僕のところでは30aほど作っておりましたが、そのうち採算が合わないようになってきたので、平成2年頃に思いきって販売単価の良い富有柿の栽培に変えました。それができたのも、『内藤さん、あんたならできる』と松永先生がおっしゃってくださったからです。あとは自分で努力して、十数年かかってようやく手応えを感じられるようになりました。良い指導者に恵まれたことで、今、ここまでできるようになったんです。」
そんな内藤さんが忘れられないのは、平成26年夏の出来事です。
「8月21日に雹(ひょう)が降りまして、色づく前の実がみんな傷まるけになってしまって。長い経験でも初めてのことでした。その5日後に全国柿研究大会が岐阜県で開催されたんですが、全国から参加いただいた方々に良い状態をお見せすることができなかったのが本当に残念でした。
ちょっとの小さな傷でも成長して実が肥大するにつれ、傷もどんどん大きくなるんです。それで11月の収穫時期、90%が売り物になりませんでした。
でも、翌年に奈良県の方が再び畑に来られて、『今年は良いね』と言ってくださって。聞けば、剪定の仕方が良かったからもう1回勉強しに来たとのことで。あれは嬉しかったです。」

長年の実績と優秀な栽培技術を持つ柿農家だけが認められる「天下富舞」栽培。岐阜市でわずか6名しかいない栽培者に、内藤さんも選ばれました。
「今、苗木から作っております。まだ生まれたばかりの柿なので、生産方法も規定も何から何まで確立されておりません。培ってきた経験を生かしながら、『天下富舞』を岐阜のブランド柿として定着させていきたいですね。」

御年76歳ながら、まだまだ現役。内藤さんが丹精込めて作った「天下富舞」にお目にかかれる日も、そう遠くないでしょう。

(注)*1反=10a=1000㎡

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