ぎふベジ


えだまめ農家安藤 増光 さんのお話(2021年7月取材)

岐阜では5月から出荷が始まり、7〜8月に最盛期を迎えるえだまめ。今回取材したのは、平成17(2005)年頃から岐阜市曽我屋地区でえだまめを生産している安藤増光さん。町役場を定年まで勤め上げ、リタイア後に農業に入ったという経歴の持ち主です。

「曽我屋の一帯は昔から農家が多かったです。私は高校卒業後、公務員になりましたが、うちも専業農家で当時からえだまめを作っておりました。まだ岐阜に選果場がなかった頃で、選別はそれぞれ家庭でするわけです。私も日曜休み返上で手伝っていました。210g入るグリーンのネット袋に、詰めては量って封をしてね。40袋1箱、うちでは4〜5箱を農協(JA)へ持っていったもんです。出荷先は京阪神市場。大粒で甘みの強い岐阜のえだまめは、当時から関西でも抜群の評価がありました。」

岐阜市で本格的にえだまめの生産がスタートしたのは昭和32(1957)年頃。当時は水稲が主流で、えだまめは稲刈り前の8〜10月が旬でした。

「ひと昔前は水田のあぜ*に棒で穴をあけては種を2、3個入れて、あとはもみがらをかぶせておけば大豆が収穫できました。今はガラスやビニールのハウスで栽培される方なら、1月下旬から種をまく。私は露地栽培が専門ですので、4月に種まきです。一度取り掛かると収穫まで畑にかかりっきり。えだまめ以外にも栽培していますが、きちんと面倒をみないと出荷レベルの品質の良いものは穫れませんのでね。」

 *あぜ…水田と水田の間に土を盛り上げてつくった堤。

多くの農家さんと同様に、安藤さんを悩ませるのは害虫被害。中でもシロイチモンジマダラメイガなどの幼虫はえだまめが大好物。安藤さんは安心安全なえだまめ出荷に向け、細心の注意を払って防虫対策に取り組んでいます。
「市場は虫食いがないL級の品質を求めますから、栽培は虫との格闘です。豆のさやに虫がポチッとキズをつけてもいけない。さやがふわふわで柔らかいときに幼虫がさやに入り込まないよう、種をまいて40日後に消毒するんですが、雨が降ってタイミングが遅れると、その2〜3日のすき間を狙って虫がつく。これが表面からは虫の気配はわかりません。収穫期に割ってみてわかる。一度、45mの畝(うね)1本、2列分をまるっきり棄てたこともあります。」

えだまめ栽培は乾燥が禁物で適度の水やりも欠かせません。今年は5月から断続的に雨が降ったことで、安藤さんの畑では水やり作業なしで順調に収穫期を迎えたそう。
「下の葉っぱが1枚、2枚、黄色くなり始めたら収穫の合図。すぐに収穫しきらないと味も栄養も落ちてしまいますから、3日間が勝負です。私はひとりでやっておりますので、すべて手作業。毎朝5時に圃場に出てえだまめを株元で切り取り収穫し、6時半には自宅の作業場へ戻ってずーっとさやをちぎる。終わるのは大体1時半頃。それからサッと昼飯を食べてちょっと休憩して、3時頃から水洗いです。そして4時〜4時半の農協(JA)の出荷に間に合うよう、選果場へ持っていく。収穫どきはこれがほぼ毎日、1ヶ月続きます。」

そう語る安藤さんの表情は、繁忙期にも関わらず至って穏やか。

「私にとって農業は健康管理の意味が大きいです。天候と付き合いながら、リズムを持って楽しくやっております。雨が降ったら趣味の古文書を解読する、まさに晴耕雨読な暮らしです。」

リタイア後に新たに始めた農業。えだまめ栽培への情熱が、安藤さんのセカンドライフを豊かなものにしています。

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