ぎふベジ


岐阜市水田農業担い手協議会後藤 宗夫 会長のお話(2019年10月取材)

10月下旬頃に稲刈りのピークを迎えるハツシモ。岐阜県の奨励品種ブランド米で、その作付面積は県内の30%以上を占めると言われています。後藤宗夫さんは、岐阜市の三輪地域で代々お米づくりに従事してきた“お米のプロフェッショナル”。現在40haもの田んぼで、ハツシモを中心に8種類のお米を息子さん・弟さんと3人で栽培しています。

「田んぼを手伝うようになったのは小学校5、6年の頃です。当時はコンバインもトラクターもありません。収穫時期は、学校から帰ったら鎌を持って田んぼへ直行です。一株ひと株、稲を刈るのは根気のいる作業で、子ども心に嫌だなぁと思ったこともしょっちゅうありました。それでも、お米を糧に家族の暮らしが成り立っていることは分かっていたので、文句を言わず農作業に打ち込んだものです。」
聞けば、御年80歳。活力あふれる身のこなしやテンポの良い話口調から、年齢をまったく感じさせない後藤さん。20代から定年を迎える60歳まで岐阜市役所に勤務し、兼業で米づくりを行ってきました。

「最初に入ったのが農林課で、次は商工で中央市場に配属されました(※1)。携わってきた農業と関連のある業務ばかりで、流通の仕組みをしっかり学ばせていただきました。その後、都市計画部を経て再び農林課に戻ると、ほうれん草、トマト、大根などいろいろな部会を訪問しました。とにかく、岐阜市の農業をよく理解して、みなさんの困っていることを市として支援したいと思ったんです。」
※1 令和元年度現在、中央卸売市場は農林部所管
後藤さんの胸に常にあったのは、行政の視点から農業を支えたいという思い。えだまめ農家の手間のかかる出荷作業をみて、自動もぎとり機を開発したこともあったそう。
「房を一つひとつ手でちぎっている様子を見て、これを機械でやれて栽培面積が増やせたらと考えたんです。米余りの時代で休耕田も増えていたので、それを利用すればいいと。試しにやってみたら一反あたりで従来より5割も多く収穫できた。それで自動もぎとり機を岐阜市中に広め、平成18年には県内市町村別1位、全国3位まで収穫量を増やしました。」
どんな作物も自身の田畑で栽培体験し、農家の思いに寄り添う姿勢に、「えだまめ課長」と慕われた後藤さん。60歳で役所勤めを終えると、一大決心のもと、米づくりに専業することにしました。
「農林課の頃から、地域の米作を守っていく必然性を強く感じておりました。守るには誰かがやらなければいけません。そこで、後継者のいない周辺農家に『私がやります!』と声掛けしたんです。
すると10戸ほどが賛同し、自分の1.2haの田んぼと合わせて3.5haから始めることができました。それでも赤字ではいかんので、家内と二人で少しずつ田んぼを増やし、10haになった頃、ようやく採算ベースに乗せることができました。」
平成24年に岐阜市水田農業担い手協議会会長に就任し、米農家の後継者づくりにも尽力。平成28年には皇居で実施される新嘗祭で、後藤さんが岐阜県の献穀者として選出されました。
「今後の食料の安全保障を考えたら、お米は日本で100%自給できるようにしなればと思います。ここは“瑞穂の国、日本”ですからね」と、にっこり。
あと5年はコンバインに乗ってがんばりたいと語る、後藤さんの挑戦はまだまだ続きます。

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