ぎふベジ


岐阜市かき共販振興会広瀬育夫 会長のお話(2022年11月取材)

ぽってりと丸く大玉の富有柿。長良川に育まれた岐阜市の肥沃な土壌は、かきづくりにも適しており、瑞穂市や本巣市糸貫と並んで冬の名産品です。11月初旬、七郷地区にある広瀬育夫さんの果樹園では、色づき始めた富有柿が鈴なりに実り、収穫を今かと待ちわびていました。

「桃栗3年かき8年と言いますが、かきは果樹を植えてから8年経ってやっとしっかり実がなる。私は長らく地元のものづくり企業で技術開発やシステムエンジニアをやっていて、定年退職を機に家業のかきづくりに入りました。今年で12年目になりますが、毎年同じように収穫できるわけではなく、気候や害虫などの“予想外”に日々対処しながら気づけば10年以上経っていた、という感じですな。」

言葉を一つひとつ噛みしめるように、じっくりと語る広瀬さん。60歳で本腰を入れるまではかきづくりは手伝い程度で、手探りでここまでやってきたと話します。
「もともと両親はこの土地で酪農をしておりました。2000年代に入る頃には廃業して米作に転換しましたが、酪農家の頃から牛のたい肥を有効活用して一部でかきを栽培していたんですね。今は3反ちょっとですが、家内と二人でやるのにちょうど良い広さです。」
広瀬さんは並行して米づくりにも携わっていますが、トラクターや耕耘機で取り組める稲作とは違い、かきの栽培は手仕事が肝心だそう。
「かきは手間がかかって、その手間の程度に応じて良いかきができるというところがあります。一番手間がかかるのは、5月に行う摘蕾(てきらい)と7月下旬の摘果(てきか)。大きな実をつけさせるためには、新梢(しんしょう)1本につき1個だけ蕾(つぼみ)を残す。この作業が摘蕾で、さらに花が咲けばまた間引くということです。こればっかりは機械ではできません。最初の頃はなぜこの作業をやらないかんのかと、わからないこともいろいろありましたが、岐阜農林事務所が研修会などで周知させているので助かっています。まぁ10年も経験すれば、ある程度のことはできるようになりました。」
昨年は8月の低温の後、9月下旬に高温になり半分が落果。一昨年は梅雨時期の長雨で生理落果と、不作続きの2年でした。
「今年は例年に比べたら天候に悩まされることは少なかったので、わりかし良い感じじゃないでしょうか。予想外にカメムシの被害に遭って、Aランクにできないものもありますけども、まぁ豊作だと思います。
害虫にやられないよう、いかに手間をかけずに上手くつくるかが難しいところで、そこを追求し続けて現在に至る、という感じですな。」
そう話し、やわらかに顔をほころばせる広瀬さん。会社員時代に培ったパソコン技術を活かし、情報収集やデータ分析にも余念がありません。
「もっと良くしたい、不良をどうやったら無くせるか、という思いは常にあります。その年の気象状況はもちろん、消毒を散布するタイミングや量が重要で、結果は収穫月にならんとわかりませんから、何事も手探りでやる。妥協点を探りながら妥協点で栽培するというのが悩ましいところであり、面白さなのかもしれません。」

広瀬さんの言葉の端々に垣間見えるのは、かきづくりへの謙虚な姿勢と生産者の覚悟。
「今メインでやっているのは定年退職した団塊の世代。高齢化が進んで生産量の減少を食い止めるため、若い世代にかき園を貸し出す動きが出てきています。そういう人が増えるにはどうすればいいのか、そこが課題です。」

岐阜市かき共販振興会会長として地域や生産者の未来も見据え、広瀬さんはこれからも「良いかきづくり」を追求し続けます。

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