ぎふベジ


岐阜市園芸振興会ねぎ部会 マルキタ出荷組合ねぎ部会林 敏信 会長のお話(2020年12月取材)

秋から初冬にかけて、ねぎの収穫がピークを迎えます。北長森地区で農業に就いて約52年の林敏信さんが、ねぎ作りを始めたのは20年程前のこと。現在、ねぎや春キャベツ、ブロッコリー等を栽培し、作物がうまく育つためのサイクルを考えた輪作に取り組んでいます。

「うちは祖父の代から農業をやっていたから、長男に生まれた私は跡を継ぐのが当然という感じでね。何の抵抗もなく農林高校に進み、家業に入りました。まだ耕うん機もない時代でしたから、稲作はすべて手植えです。人手が要りますから、田植えの繁忙期は学校を休んで手伝いました。うちには各務原市の鵜沼地区にも圃場がありますが、向こうは火山灰土を開拓したような土地で。あの頃は自動車もなくて、鵜沼で収穫したさつまいもや麦はリヤカーで運んでいました。」

懐かしそうに目を細め、当時を振り返る林さん。本格的に農業の道に入ってからは、出荷組合の仲間と話し合い、わからないことは聞きながら仕事を覚えていきました。
「白菜を主流に作っていた頃、連作障害で生育不良が出た。ちょうど白菜の消費量も減りはじめていた頃だったので、白菜に代わるものとしてねぎを栽培することにしたんです。岐南町に伝統野菜の『徳田ねぎ』というのがあるんですが、手始めに種を蒔いたらよく育ってね。種屋さんが苗を分けてくれと言うくらいでした。出荷したらその年はねぎが大当たりで、面白いくらい儲かりました。それから作り出したんです。」

ところが国産ねぎが高騰したことで安価な中国産の輸入ねぎが市場を占め、値崩れが起きました。
「セーフガード(輸入制限措置)がかかりましたが、あまりに安値になったので栽培を止めようかと思いました。そのうち中国産野菜の残留農薬問題が起きて、安全、安心な国産野菜が注目されるようになり、私らも頑張ったわけです。なにより鮮度が大事ですから、収穫したらすぐに皮をむいて箱詰め作業。明くる日に市場へ持っていくと、まだ箱から新鮮なねぎの香りがフワンと匂ってきますよ。輸入ねぎにはないやつやね。」
しばらく徳田ねぎを栽培していた林さんでしたが、10年ほど前から長悦という品種にシフトチェンジ。今は6〜8月は長悦とホワイトスター、10〜12月は夏扇を栽培しています。
「霜が少なく冬も暖かい岐南町と違い、北長森地区では寒くなると葉の色が悪くなったり、雪が降れば葉が折れてしまう。徳田ねぎは土地には合わないということで長悦に変えました。長悦は夏の暑さの中でも生育が良く、葉の青みが濃い。消費者に喜ばれる見た目も良かったんです。」
ここ数年、市場は太い1本ねぎが主流。見映えのする長悦はもってこいですが、“白根(白い部分)が長いねぎ”の栽培は、林さんの悩みの種に。
「ねぎの白根は土を寄せて作る。以前は機械でバァーッと一気に30cmほどの高さまで土を寄せていたんやけど、最近は夏場になると40℃近いですから土が高温になりすぎて腐っちゃう。これはいかんということで、今は土寄せを10〜15cmにして、後は白黒フィルムで日光を遮り、強制的に白根を作っています。」

この地域で栽培するねぎは「長ねぎ」といって、白根だけではなく青い部分も大事な商品。そんな青い部分には害虫がつかないようにと、林さんは心血を注ぎます。この道に入って以来、つけている農業日誌が林さんの最高の参考書。今年の気候に合わせ、2〜3年前の記述を参考に作業を進めます。「輪作で作るから、ふかふかの柔らかい土になる。やっぱり土が一番、基本」と、にっこり。これからも試行錯誤しながら、時流に合った最良のねぎを追求し続けます。

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