ぎふベジ


岐阜市水田農業担い手協議会渡邊 益男 会長のお話(2025年10月取材)

10月中旬、岐阜市の上城田寺地区は収穫のピークを迎えます。稲刈りを終えたばかりの圃場(ほじょう)で、さっきまで黄金色の稲穂を実らせていたのは県推奨品種のハツシモ。長良川の清らかな水と肥沃な土壌に育まれ、大粒で適度な甘味とほんのりとした香りが特徴のブランド米です。

「今年はまぁまぁの豊作です。去年みたいにイネカメムシが大量発生しとらんでね。」
と、にっこり笑う渡邊益男さん。米農家仲間とアグリファーム上城を運営する傍ら、岐阜市水田農業担い手協議会では会長を務め、ハツシモを筆頭に米作りに尽力しています。

「親父が兼業農家をしておったもんですから、自分もそうなるのだろうと中学卒業後は岐阜県立農林高等学校に進学しました。将来の農業従事者を育てる学校ですから、実践的な学びも多かった。たとえばこの辺りは水田地帯で農作物が限られる地質やけど、田んぼの中に高く畝(うね)を作ればいちご栽培には適しています。それで高校2年のとき、親父に『米だけやなく、いちごも作ったらどうか』と話したのをきっかけに、親父が稲作の合間にいちごも作り始めたんです。それが当たってハウス栽培を始めると、高収入を得ることができて、親父も喜んでおりました。」

高校時代から米農家の在り方を模索していた渡邊さん。“農家の発展のため”という意識は就職先の岐阜市役所でも存分に発揮されました。

「定年まで農業関連の部署に配属されておりましたから、当時9000戸ほどあった市内の農家の方々に精通し、また地域の方々にも顔を覚えられて。そうしたネットワークを活かし、市内28校区で各1~2品、地域ならではの特産品を作るように推進しました。同時にJAと協力し、直売所を作っていただいて。それが『おんさい広場』です。」

「おんさい広場」と言えば、岐阜の野菜直売所の聖地。渡邊さんはその候補地探しにも参画し、オープンを見届けて2008年に市役所を定年退職すると、岐阜市文化センター等で館長を歴任。2012年から地元農業組合が前身のアグリファーム上城に腰を据え、行政で長年培った経験や人脈を基に生産者と農作物の発展に寄与し続けています。
「田植え機も稲刈り用コンバインも、実質稼働するのはそれぞれ2週間ほど。それで小型のものでも1台300~400万円はしますから、設備投資しようにも個人農家にとっては容易なことではありません。そこで大型機械を購入し、アグリファーム上城の基礎をつくりました。当初は農作業受委託という形で、我々で田おこし、田植え、稲刈りを行っていました。その方が自前で機械を持つより効率はいいですね。」

※農作業受委託とは、農業機械を所有していない小規模農家が機械と人手を機関に委ねる一つのサービス。農作業受委託を利用することで、設備投資をせずとも生産性の向上が期待できます。
「農林水産省の政策で全国的に農地の集積化が推奨され、私らも借り入れ農地を増やして面積を拡大して、地域で大きな農家を創ることになったんです。それで上城田寺地区の米農家70軒ほとんどを借り上げ、また、近隣地域の農地にも拡大して、今は40ヘクタールほどになりました。そのうち26ヘクタールでお米を作っておりますが、様々な補助金を活用して大型コンバイン、田植え機、トラクターなどを購入しましたので、農作業受委託にも役立っております。」

広い視野で岐阜の米作りを見据える渡邊さん。個人農家とwin-winの関係を構築しながら、ハツシモのさらなるブランディングの向上を目指します。

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